恋神様に願いを込めて

佐野くんと校門前でわかれて、家までの道を一人で歩く。


車で迎えが来ているなんて嘘だ。佐野くんに家まで送ってもらうのが申し訳なくて、嘘をついてしまった。



家に着くと、リビングの方から駆け寄ってくる音が聞こえて来た。



「遅かったわね」



少し不機嫌そうなお母さんだった。



「ただいま、お母さん。生徒会の手伝いをしていたの」


「…それって、本当にあなたがやる必要あったの?最近学校が終わったら真っ直ぐ帰って来ていないじゃない。一体何をしているの?」


「…心配しないで、お母さん。図書室で勉強をしてから帰っているの。あそこはとても集中ができるから。今日生徒会の手伝いを頼まれたのも、先生から期待をされているからよ」


「勉強なんて、今更なんの意味もないじゃない…。そんなことよりも早く家に帰ってきてくれた方が、私は安心するの」


「わかってる。…だけど、約束したでしょ?私のしたいことをお母さんは口出ししないって」



ぐっと黙ったお母さんの横を通って、二階の自分の部屋に行く。



私は昔から心臓が弱かった。


入退院を繰り返して手術をしたり、薬を飲んだりしたけど、あまりよくならなくて今年には余命宣告までされてしまった。


もう少しで今年が終わってしまう。それは私の命の終わりも近づいてきているのと同じだった。



もうすぐ自分が死んでしまうとわかっていても、実感はいまだに湧かない。