恋神様に願いを込めて

「恋愛したことなくて、どうしてあんなに的確にアドバイスできたりするんですか?」


「え?」


「あ、いや気になっちゃって。嫌だったらスルーしてくれて構いません」


「…聞いた話から、こうしたらどうかと思ったことをそのまま伝えているだけ。最初はなんの知識もないから適当なことばかり言って、それがうまくいっていたからよかったけど、段々相談してくる人も増えてきてそれじゃダメだと思って漫画を読んだりドラマを見たりして勉強したの。恋愛って勉強みたいに簡単にはいかないから難しいわ」



恋愛をしたことはないけど、この一ヶ月でたくさんの恋の話を聞いた。


聞いているうちに恋愛に興味が湧いてくるなんてことはなかったけど、恋愛の難しさを痛感した。



どうしてみんな、辛かったり苦しい思いをしてまで恋愛をするのか。それはずっとわからないままだったけど。



「先輩が恋愛の神様って言われる理由がなんとなくわかった気がします。きっと、自分のことのように一生懸命話を聞いて、アドバイスをくれる先輩だからこそ、それがたとえ少し間違っていたとしても、その人にとってはすごく励みで勇気を出す一歩になっているんじゃないですか?だからみんなうまくいくんだ」


「そう…なのかしら」



一ヶ月前まではどうでもいいと思っていた恋愛が、今ではそうじゃないことは確かだった。


色々な恋の形に触れる中でどの人もみんな一生懸命だったから。だから私も、適当な気持ちで恋する人達と関わるのはやめると決めた。


私の言葉一つで結末が変わってしまう恋愛もあるから。



「それでも、恋愛をする意味はまだわからないけどね。色々な人達の話を聞くたびに、そんな恋愛をするくらいならもうやめたらいいのにと思うことが何度もあったわ」


「恋愛をする意味、ですか…。それは先輩が実際に恋をしてみないとわからないかもしれないですね」