恋神様に願いを込めて

ホチキスを休みなくずっと持っていて少し赤くなった指先をこする。



「あ、そうだ。先輩、ついてきてください。おすすめの休憩スポットがあるんですよ」


「え?」



佐野くんに手招きをされ、不思議に思いながらも生徒会室を出てついていく。



階段で一階まで下りたかと思うと、靴箱も通り過ぎて外に出た。


そのまま校舎を沿っていくように歩いていき、校舎の裏側まで行く。


開けたその場所には特にこれといったものもなく、一本の大きな木と隅っこに白い祠みたいなものが置いてあるだけだった。



「ここが僕のおすすめの場所です。何もないけど、なんだかここにいると落ち着くんです。この木は桜の木らしくて、僕がこの場所見つけたのは夏休み明けでまだ見たことないんですよね」


「そうなんだ…。私も校舎の裏なんて初めて来たわ」


「穴場ですよ。多分ここ知ってる生徒も先生もあまりいないと思います」



佐野くんは桜の木にもたれかかるようにして座ると、んーと声を上げて伸びをしていた。



「もう十二月だから今の時期はちょっと寒いですね」


「そうね」



私も佐野くんの真似をして桜の木の下に座る。


たしかになんだか落ち着く気がした。