恋神様に願いを込めて

「なんで見てんの…。別に、傘貸してもらっただけだし」


「へぇ、なんだ」



…もしかして、心配してくれたのかな?


充希先輩の彼女だから…って、そんなわけない。もしそうだとしても、こいつはみんなにそうなんだから。


別に私だけ特別なわけじゃないんだから…。



「てかいつまで入ってるの。そこらへんのコンビニで傘買ってよ。これは私が借りたんだから!」


「ええ、まあでもそうだよね…。でもここらへんコンビニないんだよね…」


「…駅までなんだからね!」



仕方ない。意識しないようにすれば、駅までくらい余裕で…。



「折り畳み傘って思ったより小さいね。結芽花ちゃんとチューできちゃいそう」


「したらぶっ飛ばす!」



忘れていた。こいつが息を吸うように女の子を口説く男だということに。



なんとか無事に駅まで辿り着き、帰る方向が真反対の五十嵐とやっとわかれる。


改札をくぐる前にちらりと五十嵐を振り返ると、右肩だけ遠目から見てもわかるくらい濡れていることに気づく。



…そういえば、小さい折り畳み傘に二人で入っていたというのに私はどこも濡れていなかった。


ずっと私が濡れないように傾けてくれていたんだ…。