そんな状態でしたから、学園で初めて顔を合わせた、親同士の決めた婚約者――ロビンとの関係だけは、何としてもうまくやらなければ、と気負っていました。

 ロビンはいつも堂々と、自信に満ち溢れた人でした。

 将来結婚する相手なのだから、何でも言い合える関係になりたいと思い、私にしては珍しく勇気を振り絞って話しかけたりもしました。ロビンが間違ったことを言っていると思ったときには、それを正すようなことも口にしました。

 あまり親しい友達がいない中で、ロビンとの軽い口論は、私にとって新鮮かつ楽しいもので、学園生活における心の支えになりました。


 ロビンが言い返してくるのが、「仲の良い証拠」ではなく、本当に嫌がられているのだと気付いたのは、いつのことだったでしょうか。

 あるとき、ロビンがいつも一緒にいる男友達と、「女性が誕生日とかイベントに拘る気持ちが分からない」「当日でなければならないなどと、愚かなことだ」と話をしていたところに、ちょうど居合わせたことがありました。

 私は、誕生日や記念日は特別な日だと思っており、できる限りその日のうちに「おめでとう」と言いたい人間です。
 親しい人が、誕生日をポツンと過ごしている様子を想像するだけで悲しくなりましたし、日付が変わった瞬間に従兄弟たちと「おめでとう」と言い合うのも習慣になっていました。

 もちろん、誕生日当日に会えなかった人には、後日プレゼントを渡すということもありましたが、友人に当日、いきなりプレゼントを渡したときの「覚えていてくれたの?」という笑顔には代え難い、と思っていました。
 そのため、何の気なしに、口を挟んだのです。


「誕生日とかって、やっぱり、当日に特別な意味があると思うわ。」