二人の永遠がこの世界になくても

「お腹空いたね」

ベッドに並んで座って、沈黙が気まずかったのか春華がいつもとおんなじように笑った。

「うん」

「夜ご飯、どうしよっか?」

「そうだね…。私、食事のことだってママにしてもらってたのに裏切ったんだね」

「大丈夫だよ。やり直せるから。ヨヅキには俺が居るだろ?」

「願いを叶えてくれるから?」

「うん?このことについてはもう大丈夫じゃん。明日、ちゃんと実行しよう。そしたら元に戻れるから」

「都合いいよね。春華が居なかったら…普通はリセットなんてできない。みんなちょっと道を間違ってしまってもどうにか軌道修正したり何かを見つけたりして一生懸命生きてるのに。ズルいよね」

「そんなこと言わないで」

春華の悲しそうな声が、ちょっと前より低くなった気がして横顔を盗み見た。

「なぁに?」

「ううん。ごめんね」

「俺には誰かの願いを叶えてあげることしかできないから。ヨヅキはズルいなんて言わないで」

「うん。ごめん。春華を否定するようなこと言って。ズルくてもなんでも、私はやるよ。それが…春華がここに居る証拠だから」

「うん」

「友達に連絡してみる。明日、会えないかって。元々、創立記念日で休みなの」

「そっか。ねぇ、ヨヅキ。その前に…なんだけどさ」

「うん?」

「ママさん、どうしちゃったの。俺の知ってるママさんじゃ無くなったみたいだ」

今は一番聞かれたくなかったことかもしれない。
でも春華だってこのまま何事も無かったようには、うちで暮らしていけないんだと思う。

これもずっと目を背けて逃げてきた、私にも責任がある。