「ヨヅキ、なんで味方で居てくれないのって言ったよね?忘れないで。俺はヨヅキの味方だよ。何があっても。ヨヅキが幸せになって、笑って暮らせる未来だけを願ってる。もしもまた誰かが俺の願いを叶えてくれるなら、俺はヨヅキの幸せだけを願うよ。それが俺の隣じゃなくても。ヨヅキが笑っててくれれば、幸せだって胸を張って言える未来なら俺はヨヅキの幸せだけを願うから」
私が幸せになる時に春華は隣に居ない。
春華が居ない未来なんて幸せだってきっと思えない。
でもそれが正しい未来なんだ。
春華が願ってくれたように私が毎日笑って暮らせる幸せな未来を手に入れる為に、私は綺麗事なんて捨ててもっと泥臭く生きていかなきゃいけないんだ。
「春華。あの子の願いを叶えて」
「え?」
「あの子の願いを叶えて。私、本当はこの選択肢が間違ってるって気づいてる。ママが正しいってことも」
「退学、したくないってこと?」
「いじめをしたって疑われるくらいなら、あと少しだからってそういう空気の中で生活するくらいなら辞めたほうがマシだって本気で思った。辞めなくても″私は人の人生を壊しても平気な人間なんだ″って思いながら生き続けたくなかった。本当はムカついてたよ。なんでそんな濡れ衣着せられなきゃいけないのって。被害妄想で何言ってんだって、私達に一言も相談しないままズルいじゃんって…ムカついてた。だから私も意地になったの。″あなたの一言が私の人生を変えたよ″って思い知らせたかったのかもしれない。ほんと…意地悪だよね…。本当はショックなだけだったのに」
「うん」
「ショックだったの。仲良くしてたつもりだった。そんな風に思ってるなんて思いもしなかった。気持ちがすれ違ってたことも、私が話を聞いてあげられなかったこともショックだった。本当は辞めて欲しくない。私だって死ぬ気で勉強して入った高校だもん。最後までやり遂げたいよ。春華、彼女の願いを叶えてあげて欲しい。ダメかな?」
「いいよ」
「いいの?」
「その子の為に、ってはっきりとは言えないけど。その子の願いを叶えることが、ヨヅキが笑える未来に繋がるのなら」
「ありがとう。本当にありがとう。利用してごめんね」
「そんな風に思ってないよ。何も心配しないで。俺がヨヅキの未来を守ってあげる」
ゆっくり、ゆっくりと歩いて家まで戻った。
歩くスピードよりも、もっと遅いスピードでゆっくり引いてみたドアは、当たり前みたいにガチャンって音を立てて、開いてはくれなかった。
家の鍵なんて持ってきていない。
鍵が開いたとしても、チェーンがかかっているかもしれない。
立ち尽くす私に春華が「大丈夫」って囁いた。
目を閉じて、春華の言葉を繰り返す。
大丈夫。
春華が居てくれるから。
深呼吸して、ポケットからスマホを取り出した。
連絡先のアプリからママの連絡先を選んだ。
一度タップするだけなのに指が震えてしまう。
この世界には″家族″が在る。
私はここからは逃げちゃいけない。
ママが言うように、憎み切れたらどんなにいいだろうと思う。
でも私達の世界では、そうすることは難しい。
どんなに痛くても苦しくても許していくことはすごく勇気が必要だ。
ママを心から憎んでいるんじゃ無いから私はここに居る。
私を見て欲しかったのは、自分を殺してでもいい子を演じ続けていたのは、ママに愛されたかったからなのに。
私が幸せになる時に春華は隣に居ない。
春華が居ない未来なんて幸せだってきっと思えない。
でもそれが正しい未来なんだ。
春華が願ってくれたように私が毎日笑って暮らせる幸せな未来を手に入れる為に、私は綺麗事なんて捨ててもっと泥臭く生きていかなきゃいけないんだ。
「春華。あの子の願いを叶えて」
「え?」
「あの子の願いを叶えて。私、本当はこの選択肢が間違ってるって気づいてる。ママが正しいってことも」
「退学、したくないってこと?」
「いじめをしたって疑われるくらいなら、あと少しだからってそういう空気の中で生活するくらいなら辞めたほうがマシだって本気で思った。辞めなくても″私は人の人生を壊しても平気な人間なんだ″って思いながら生き続けたくなかった。本当はムカついてたよ。なんでそんな濡れ衣着せられなきゃいけないのって。被害妄想で何言ってんだって、私達に一言も相談しないままズルいじゃんって…ムカついてた。だから私も意地になったの。″あなたの一言が私の人生を変えたよ″って思い知らせたかったのかもしれない。ほんと…意地悪だよね…。本当はショックなだけだったのに」
「うん」
「ショックだったの。仲良くしてたつもりだった。そんな風に思ってるなんて思いもしなかった。気持ちがすれ違ってたことも、私が話を聞いてあげられなかったこともショックだった。本当は辞めて欲しくない。私だって死ぬ気で勉強して入った高校だもん。最後までやり遂げたいよ。春華、彼女の願いを叶えてあげて欲しい。ダメかな?」
「いいよ」
「いいの?」
「その子の為に、ってはっきりとは言えないけど。その子の願いを叶えることが、ヨヅキが笑える未来に繋がるのなら」
「ありがとう。本当にありがとう。利用してごめんね」
「そんな風に思ってないよ。何も心配しないで。俺がヨヅキの未来を守ってあげる」
ゆっくり、ゆっくりと歩いて家まで戻った。
歩くスピードよりも、もっと遅いスピードでゆっくり引いてみたドアは、当たり前みたいにガチャンって音を立てて、開いてはくれなかった。
家の鍵なんて持ってきていない。
鍵が開いたとしても、チェーンがかかっているかもしれない。
立ち尽くす私に春華が「大丈夫」って囁いた。
目を閉じて、春華の言葉を繰り返す。
大丈夫。
春華が居てくれるから。
深呼吸して、ポケットからスマホを取り出した。
連絡先のアプリからママの連絡先を選んだ。
一度タップするだけなのに指が震えてしまう。
この世界には″家族″が在る。
私はここからは逃げちゃいけない。
ママが言うように、憎み切れたらどんなにいいだろうと思う。
でも私達の世界では、そうすることは難しい。
どんなに痛くても苦しくても許していくことはすごく勇気が必要だ。
ママを心から憎んでいるんじゃ無いから私はここに居る。
私を見て欲しかったのは、自分を殺してでもいい子を演じ続けていたのは、ママに愛されたかったからなのに。



