「じゃあ私が学校を辞めればいいですか」

口から咄嗟に出ていた。
友達もゆっくりと私を見た。

「いや…いやいや、そういうことじゃなくて」

先生が慌てて私をなだめようとするけれど、一度言葉にしたらもう止まらない。

「そういうことですよね。彼女が私達が怖くて退学までするなんて、私達がここに居ることが悪いってことじゃないですか。だったら私が辞めるからこの子と仲良くすればいいじゃないですか。それで丸く収まるんでしょ?」

「ちょっと何言ってんの!夜月が辞めたら私…」

「押し付けるみたいなこと言ってごめんね。でも先生はみんなの前で言ったんだよ。みんなだってうちらがなんかしたんじゃないかって思ってる。先生はそんなこと考えなかったでしょ?」

「それは…君達の立場を考えずに悪かった。先に二人にだけ話すべきだった。彼女が言うように本当に学校に来にくいようなことがあったのか、その…教師として知っておくべきだと思ったんだ」

「何もありません。少なくとも私とこの子はそう思ってました。三人で仲良くやってるって思ってた。でも違ったんですよね?嫌な気持ちを抱えてるのに気づいてあげられなかった。彼女が人生を変えてまで退学しなくていいです。私が居なくなるから。そしたら“私達”じゃなくて私が何かしてたんだってみんなは思えばいい。そしたらこの子も教室に居づらくなくなるから」

「ねぇ夜月ヤダよ、変なこと言わないでよ。私達は何もしてないんだから堂々としてればいいじゃん!」

「そうだよ。先生からもみんなにはちゃんと話すから…」

「先生。一度立った噂は簡単には消せないんですよ。一つの教室なんて尚更、あっという間です。忘れないでくださいね」

頭を下げて私は職員室を出た。
友達が追いかけてくる。
怒っているのか泣いているのかよく分からない表情だった。