二人の永遠がこの世界になくても

その日、私が学校に居る間、春華を見かけることは無かった。

休み時間にわざと探してみたりもしたけれど、見つからない。

本当は制服を着てみたかっただけで学校に潜入する気なんて無かったんじゃないのかなって思った。

でもどうやら潜入は本当だったらしい。
帰宅した私をリビングで待ち構えていた春華は、
ママの「おかえりなさい」を遮って、私を引っ張って部屋まで連れていった。

「ちょっと、春華!」

「ヨヅキ、この子にするよ!」

春華は私に右の手の平を差し出した。
ぽわっと弱く灯る光。
そこには女の子の写真…映像…が浮かんでいる。

「何これ」

「この子はヨヅキの高校の一年生で、」

「そうじゃなくて!何、この手」

「…あぁ、初めてだったね。ごめんね、つい」

平然と喋る春華を頭からつま先まで何往復もして見つめた。
だんだん頭が痛くなってきた気がする…。

「これは俺達の記憶だよ。ちょっとしたことの報告とかに便利なんだ。いちいち写真とか撮ってたら面倒だからね」

「みんなができるの…」

「まさか!“俺達”だけだよ。物に残しちゃったら証拠になっちゃうだろ。自分達の体なら死にでもしない限りボロは出ないから」

“あ、あとは記憶を消せなかった時ね″って、他人事みたいにくすくす笑って、春華は手の平をギュッと閉じた。

次に開いた時には光は消えていた。