三月二日。
明日は高校の卒業式だ。

中学の頃からおかしくなり始めた家族の中で自分の立場を守る為に、家族の気を引きたくて死ぬほど努力して入った高校だった。

お姉ちゃんは出ていったしママとパパは離婚した。
家族は元通りにはならなかったけれど、三年間、自分の実力よりもウンと上の学校で食らいついてきたことは、自分を褒めてあげたい。

学校生活はなんとか平和に過ごしたくて、自分の意見を押し通そうとは思わなかった。
当たり障りの無い高校生活。
良くも悪くも無い、無難な人。それが私への周りの評価だと思う。

そんな中で親友に出会えたことには本当に感謝したい。
笑いのツボが合うし、特別なことはしなくても全部が思い出だって今は言える。

大学に行ったらもっと沢山の人と出会って、今じゃ想像できないくらいの経験をして、もしかしたら親友よりも気の合う友達ができるかもしれない。

それでも私は親友を忘れないでいたい。
ずっと友達だよねって言い合える関係で居たい。
それくらい、一緒に過ごした高校生活はかけがえの無い物だった。

ただ平凡に波風を立てず、対立するくらいなら自分の考えを曲げたほうがマシだって思いながら生きてきた私だったけれど、一つだけ、心の底から大切だと思える物が在った。

ううん、在ったはずだった。

何度思い出そうとしてもうまくいかない。
頭の奥がズキンってして、ある一定の期間にモヤがかかったみたいに、頭がボーッとしてしまう。

絶対に忘れてはいけなかった何か。
私の人生の中でもダントツで私を守ってきた何かが失われてしまった気がするんだ。

だけど私はいつも途中でその作業を諦めてしまう。
思い出すことが本当は怖いのかもしれない。

思い出してしまったらもう後戻りできないような、
それを記憶したままで生きていくほうがもっと苦しいような、そんな風になりそうで怖かった。

こんなに大切なことのような気がするのに忘れてしまったのなら、きっと思い出さないほうがいいんだ。
精神的な物なのか身体的な物なのかは分からない。
絶対に何か原因はあるはずだった。