姫を追放された私は一筋の光に救われた

お互いの気持ちが伝わって、私たちは抱き合った。昨日出会ったばかりだけど、凪さんは私を裏切ったりしない。

出会った時から優しく手を差し出してくれたから。


助けるのにメリットがあるか、よっぽどのお人好しか。そう思っていたけれど、凪さんは私のことが大切で大好きだから助けてくれた。ただ、それだけ。


蓮は私を傷付ける言葉をずっと隠していた。けど、凪さんは違う。私を守るための優しいウソだから。


凪さんがゼウスの総長だと知られたら、近くにいる私に危険が及ぶと凪さんは考えたんだ。

ただのゼウスの一員ならそこまで危なくない。総長の隣はいつだって危険がつきまとう。それでも私は凪さんの隣に……姫になりたいって心からそう思う。


「私、凪さんがゼウスの総長だってこと誰にも話しませんから」


「雪菜が言いふらさないのはわかってるぞ」


「あえて言葉にしてるんです。あの、凪さん」


「どうした?」


「私はゼウスの姫になりました。けど、まだやり残したことがあるんです」


「蓮とのリベンジマッチだろ?さっきも言ったとおり、俺が見届け人になる。大きな怪我だけは気をつけろよ」


「……はいっ」


正直、無傷で勝利することなんてほぼ不可能だ。多少傷だらけになってもいい。私は蓮に勝ちたい。勝って私が強いってことを証明するんだ。