2014年10月28日、あなたは一人で旅立って行った。
 「もう何も要らない。 私は満足だ。」
そう言い残してね。
 子供の頃からぼくは独りぼっちだった。
目も耳も悪いのに独りぼっちだった。
 貧乏な家だったから父と二人で働いていたんだよね。
 友達を大切にしていつも笑っている人だった。
 祖母や叔母に嫌味を言われ続け、虐められていても何とも思わない人だった。
 ぼくと父が喧嘩して叔母や祖母が割り込んできて離婚した後も一人であなたは耐えていた。

 いつかぼくも大人になってあなたから離れてしまった。
でも覚えてるよ。 あの交通事故の日。
死にかけているあなたを本気で助けたいと思った。
おこがましいかもしれないけど、自分の寿命をあなたに捧げられた気がする。
だってそれから17年も生きてくれたんだ。

 脳が完全に潰れていた。 医者には「助からない。」と言われていた。
それがさ、組成してリハビリにも耐えてくれたんだ。
 命ってすごいんだね。 人間ってすごいんだね。
そのことをぼくにあなたは教えてくれた。

 末期がんで寝込んでいる枕元に2歳になったばかりの息子を連れて行った。
ぼくに似てるってあなたは喜んでくれたよね。
その時にぼくは確信したよ。
必ず息子に会いに来るって。
息子からぼくの話を聞くんだって。
だから寂しくなんか無いよ。 母さん。
 いつかまた会おうね。 その時を待ってるよ。
 産んでくれてありがとう。
悩んでくれてありがとう。
死ぬ日までぼくのことを心配してくれてありがとう。
また会おうね。