朝都はとんかつに箸をつけ、食べた。
 「ああ、うまいぜ。まことのとんかつ」
 と、朝都。
 「総長、好きなものから食べるよね」
 と、真冬。
 「あ、ったりまえだろう。地震でも来たら、どうすんだよ」
 と、朝都。
 「ははは」
 と、真冬。まことも笑った。
 「いい香りだね」
 と、真冬。
 「そ、そうか」 
 まことは照れた。
 「彩りもいいよね」
 「あ、ああ」
 と、まこと。
 「さすが真冬君は言葉遣いがいいねえ」
 と、父。
 「そんなんいいから早く食えよ」
 と、朝都。
 「あ、わかった」
 真冬はキャベツを食べた。
 「キャベツ、シャキシャキしておいしいね。キャベツで料理がうまいか、わかるんだよね」
 と、真冬。
 「ほんと」
 と、まこと。
 「うん」
 と、真冬。
 「ほほお、まこともちょっとずつ父の腕に近づいておるようだな」
 「ふん、てめえのへなちょこ腕なんざあ、あっという間に追い抜いてやるぜ」
 「ふん、どうだかな」
 「ふん」
 「真冬、とんかつくえ」
 と、朝都。
 「うん」
 と、真冬はにっこり笑った。
 真冬はとんかつに箸をつけ、口に持っていった。まことは息をのんで見守った。真冬はとんかつをかじった。真冬はむしゃむしゃと食べた。朝都と、まことが見守った。
 「どうだ」
 と、朝都がきいた。
 「うん。とっても歯ごたえがあっておいしいね」
 まことは喜んだ。
 「そうだろう。うまいだろう」
 と、朝都。
 「まこともとんかつ食えよ」
 と、朝都。
 「う、うん」
 と、まこと。まことは箸を持ち、とんかつをとった。そうしてとんかつをほおばった。
 「どうだ」
 と、朝都がきいた。
 「うまい」
 と、まこと。
 「だろう」
 と、朝都。
 まことは笑った。
 三人はとんかつ定食を食べた。