盗撮は本人から許可をもらって難を逃れたけれど、もしまたお願いされて

『次は鷹見くんを撮ってきて』

なんて言われたら、今度こそ犯罪に手を染めないといけなくなるかもしれない。

きっと鷹見くんは、お願いしても写ってくれないだろうから……。


ビクビクしながら毎日を過ごして、十和田さんのいじめに耐えた。

せっかく入った学校を途中でやめるなんて、お父さんに迷惑がかかる。心配させてしまう。

大丈夫。耐える。

きっとそのうち飽きて、どうでもよくなってくるよ。

お父さんには心配かけない。





あれから一か月。二度目のお茶会の日がやってきた。

お茶会は、執事科がもてなす席に、S学のお嬢さまやお坊ちゃまたちが着いて、紅茶やスイーツをたしなみながらお話をする会だ。

メイド科の生徒は、壁に並んでそのようすをただ見ているだけ。


しかし、十和田さんが「来なさい」と手でジェスチャーしている。


「璃衣、大丈夫?」


同じメイド科の近江(おうみ)奏音(かのん)ちゃんが心配して声をかけてくれる。

わたしはせいいっぱいの笑顔を作って、「大丈夫だよ」と答えた。