今の声、鷹見くんだと思ったんだけど。でも、廊下には人がたくさんいて、鷹見くんらしき人は見当たらない。

それに──。


「璃衣、どうした?」


一緒に歩いている永遠くんには聞こえなかったみたいだから、気のせいかな。

鷹見くんのことを考えていたから、空耳が聞こえちゃったみたい。


振り返った体を戻そうとしたときだった。


「やっぱり宮戸さんだ」


人ごみのなかから鷹見くんが現れた。

気のせいじゃなかったんだ……!


「その頭、見つけやすくていいな」

「頭? あ、お団子のこと?」


学校がある日は、毎朝、かならずお団子ヘアを作る。

入学したばかりのころは二つ結びにしてたんだけど、マナーの授業で食べものに髪が触れて怒られてから、お団子ヘアにするようにしたんだ。


毎朝作るのは、けっこう大変だけど……。

見つけやすいって言ってもらえるなら、これからもこの髪型にしよう!