「寒いねえ」
 と、冬。
 「そうですね」
 と、お父さん。
 「こんなとき、あいつがいたらなあ」
 と、高瀬君。
 「ん、あいつって」
 と、お父さん。
 「知りません。ファイアドレイクを」
 「ファ、ファイアドレイクだって」
 と、お父さん。
 「そうファイアドレイク、炎の竜」
 「ほ、炎の竜だとおおおお!」
 と、お父さん。
 「そう、あいつがいてくれれば、あったかくしてくれるのに」
 「なに!高瀬君はそいつの知り合いなのかい」
 「ええ、まあ」
 「なにいいいいい」
 「ちょ、ちょっとお父さん、何言ってるの。恥ずかしいよ」
 「あ、はははは」
 と、お父さんは片手を後頭部にやった。
 「帳、何言ってるの。申し訳ありません、お父さん、帳に合わせてくれて」
 と、冬。
 「いえ。面白い弟さんですね」
 「いえ。ばかなことばっかりいってて」
 と、冬。
 「そんなことより、お父さんじゃなくて、まことで、いいですよ」
 「え、ほんと。じゃあ、遠慮なくまことさん」
 お父さんは赤くなった。
 「あ、お姉さんのことはなんて?」
 「ああ、冬で結構です」
 「ふ、冬さん」
 「はい」
 「もお、お父さん」
 と、チセ。
 「ははははははは」
 皆笑った。