この手に描いていた夢は掴めなかったけれど。
「あ、そうだ家入ってく?じいさんに会ってく?」
「は!?じ、じいさんって……あの、書道家の?」
「うん。ずっと葉ちゃんに会いたがってるよ」
「な、なんで!?わ、私面識ないんだけど!」
「俺じいさんに葉ちゃんのこと全部話してる。ってか、恋愛相談してるから」
「あの有名な書道家の瀬名川劉辰さんに?名門流派のあの方に!?」
「うん。中身は普通のお爺ちゃんだから」
「……し、信じられない」
「おいでよ。ほら」
「ちょっ、ちょっと待ってってば!こ、心の準備が……っ」
この手で、愛なら……掴めるかもしれない。
他人よりも少し早い、私の第二の人生が──……幕を開けた。
―《完》―



