愚かなキミの、ひと目惚れ事情。【完】





瀬名川はそう言った途端、大きな一歩で私との距離をグッと縮めた。

そしてそのまま、私を抱きしめる。


痛いくらいに、力いっぱいに。




この時初めて、私は他人のぬくもりを知った。

瀬名川の体温は、ピタリとくっつくことで私と同じ温かさになった。


心臓の脈打つ音が、何故かとても落ち着いた。




彼の腕に抱かれた安心感は、私が今まで抱いていたソレとは全く別物だった。

瀬名川の腕の中で、ふと、私はここにいていいのかもしれないと思ったことは、まだ秘密にしておこう。






「葉ちゃんがもっと欲しいです」

「うん、いいよ。もっとギュッてしても」

「……違う。そういうことじゃない」

「は?じゃあどういうこと?」

「……イチャイチャしたいってこと。スイッチ入っちゃった」

「今すぐ離れて」

「やだ、無理、絶対却下」

「離れてってば!」

「葉ちゃんが必要以上に可愛いのが悪い。顔赤くして俺を見上げるとかソレもう狙ってるとしか思えない」

「ち、違うし!そんな顔してない!」