「──いいよ、買ってあげる」
「は?」
「あのショッピングモールの中にきっとあるよね、お店?行こうよ、デザインは俺よく分かんないから葉ちゃんが選んでよ?」
「は、いや、アンタ正気?バカなの?」
予想外の返答に、思わず足を止める。
これ以上私に近寄ってくるなと牽制した腕を、彼はキュッと掴んで離さない。
冗談も通じないのかと拒む私に構うことなく、瀬名川は「ホラ早く」と言って私のカバンを持ちながら、指差した大型ショッピングモールへと足を進めていく。
「あのね、葉ちゃん。卑怯だってことは承知の上、なんだけど」
「行かないし、要らないってば。手、離して」
「葉ちゃんの欲しいモノを買ってあがる代わりに、俺がこれから聞く質問にちゃんと答えてね」
「は?」
「ハイ出発しまーす。パッと買ってじっくり話聞きたいから行くよ」
「ちょっ、待ってってば!質問って……」
質問ってなに?
私の何が知りたいの?
当然の如く生まれたそんな疑問は全部口に出せないまま、再び彼のペースに呑まれていく。



