髄液を吸引し減圧すると、腫瘍が見えた。更に腫瘍を肥大させている元となる血管を焼ききる。
「本田先生、水かけてください!」
「はい」
更に切り抜き進んでいくと、硬膜に腫瘍が癒着しているのが見える。これを剥離すれば手術は終了となるが、ここからはとてつもなく神経を使う作業になる。
「――――い」
本田先生がマスク越しで弱々しい声を吐いた。
「…………はい?」
「……できない。羽倉先生、お願いします。サポートするんで」
「何言ってるんですか、一人だったら何時間かかると思ってるんですか。一緒に剥離していきましょう。練習したでしょう?」
「で、でも。もし神経を刺激してしまったらって不安なんです。俺、腫瘍持ち上げてるんで」
人のことを羨ましがりがるくせに、せっかく回ってきたオペのチャンスは逃がす。これなら研修医の小川くんに入ってもらった方がマシだ。
他の脳外科医には媚売って、ろくに仕事もしないで研修医の小川くんに当たり散らす。
「…………すみません、他の脳外科医呼んでもらっていいですか? 誰でもいいんで。さすがに僕一人じゃ無理です」
仕方なく外回りの看護師にお願いし、他の脳外科医を呼んでもらう。



