「西嶋くんが御守り渡したい相手の人って、どんな人なの?」
「え!?」
2人並んで、本殿の方へ向かっている途中、
憧子が思い切って質問を投げかけた。
大地は顔を真っ赤にして、慌てている。
そして、少しだけ憧子から顔を逸らすと
「…笑った顔が、可愛い子。」
と、照れ笑いした大地。
また、憧子の胸が痛んだ。
すると。
「あの…これ。」
大地が、たった今買ったばかりの御守りうち、赤色の方を、憧子へ差し出した。
「?…あ!プレゼント用だもんね。小分け袋に入れてくるね!」
そう言って、社務所へ向かおうとした憧子の手を、慌てて大地が握った。
「違う!そうじゃなくて…」
そう言う大地の顔は、境内で色付いているモミジのように、ほんのり赤い。
大地に手を握られた憧子の顔も、同じくらい赤く染まった。
そんな憧子の様子を、大地は真っ直ぐ、真剣な目で見つめる。
そして、言葉を続けた。
「御守り…相手に渡したら、縁が結ばれやすくなるんでしょ?」
「う、うん…?」
──えっ、え!?それってつまり…
大地が口にした言葉の意味を考えながら、憧子はますます顔を赤く染めた。
目眩がしそうなほど、
心臓が、ドキドキと脈打って、
止まらない。
そんな憧子の様子を見つめた後、大地は満面の笑みでこう言った。
「佐敷さんが選んでくれた御守り、効果めちゃくちゃ出るみたいだし、御守り渡したい人にも受け取ってもらえたし。縁結び、叶いますように!」
にっ、と笑った大地は、いつものように爽やかで。
そしていつにもなく、照れた表情だった。
憧子にだけ、向けられた爽やかな笑顔。
胸が、キュンとした。



