「そろそろいい時間なんじゃない?親睦会、楽しんできてね!憧子ちゃん、また遊びに来てね。」
そう言って見送ってくれた茉奈に手を振って、美容室を後にした。
学校まで歩いて10分程。
学校に向かう途中、なんとなく無言になってしまった。
──なんか、気まずい!?
内心、不安になりながらそう感じていると、大地が口を開いた。
「着替えまでさせちゃったけど、大丈夫だった?」
「え!?」
憧子が大地を見ると、少し頬を赤く染めた大地が、憧子を横目で見下ろしていた。
「ほら、姉貴えらく気合い入ってたからさ。勢いに負けて、無理矢理着替えさせられたりしなかったかなと思って。」
「う、ううん!大丈夫!!むしろ…」
「?」
「西嶋くんに教えてもらった通り、『どーにでもなれっ!』って思って、思い切って西嶋くんとお姉さんにお任せしてよかったと思ってる。自分1人では破れなかった殻を一緒に破ってもらった感じがしてて、今すごく嬉しいの。だから…」
憧子はそこまで言うと、大地の顔を見上げ、にっこりと微笑んだ。
「だから、変わる勇気をくれて、ありがとう。」
憧子がそう言った瞬間、大地は口元に手を当てて顔を逸らした。
「ど、どういたしまして…。」
「?」
──変なこと、言ったかな?
顔を背けたまま、なかなかこっちを見ない大地の横で、憧子はだんだんと学校に近づくにつれ、緊張感が高まっているのを感じていた。



