縁結び−変わる勇気をくれた君と、秋の風―


「ん!いい感じ〜!程よく抜け感あって、ちょうどいいね!」


出来上がりに満足した様子の茉奈は、スマホを取り出して大地に「終わったよー」とだけ伝えると、憧子を見てにっこり微笑んだ。


「これで、憧子ちゃんもちょっとは自分に自信持てるかな!?」


近くにある姿見の中に映る憧子。

いつもと違う自分の姿に驚いた。


「…すご。ありがとうございます…!」


メイク室を出て、美容室の出入り口までくると、ちょうど大地がドアを開けて入ってくるところだった。


振り返った憧子を見て、大地が一瞬、固まる。


「大地、どうだっ!可愛くなったでしょー?」


ふふん、と鼻を鳴らさんばかりの姉の方には目もくれず、憧子を驚いた表情で見つめたまま、固まる大地。


「あのー?」


大地の後ろから、お店に入りたそうにしているお客さんから声をかけられ、大地は慌てて「すみません!」と言って、避けた。


「大地、見惚れすぎー!」


茉奈があははっと笑う。



相変わらず驚いた表情の大地を見て憧子は不安になった。


「あの…変かな?」


憧子がそう言うと、大地は慌てて頭を振った。


「まさか!めちゃくちゃいいよ!可愛い!大人っぽい!」


「なっ…!」


急に褒めちぎられて憧子の顔が、一気に火照る。


「さすが大地、正直ねー!」


あははっと笑う茉奈。


はっきりとした物言いの大地から褒められると、きっとお世辞じゃないんだと思えた。



それが余計に、嬉しい。



大地に褒められたという事実も、素直に嬉しかった。