「こんにちは!」
大地がスタッフに声をかけると、奥の方でお客さんの髪を乾かしている見知った女性がこちらを向いた。
「大地!と、あら、憧子ちゃんいらっしゃーい!」
「こ、こんにちは!」
まさか大地の姉がいるとは思わず、憧子が驚いていると。
「座って待っててー!もうすぐ終わるから!」
大地の姉に言われるがまま、2人並んでソファに腰掛ける。
「ちょ、ちょっと西嶋くん!」
ヒソヒソ声で憧子が話しかけると「ん?」と言いながら大地が憧子の方に体を僅かに傾けて耳元を寄せてきた。
──ち、近っ!しかもなんかいい香り…!?
少し顔が熱くなるのを感じながら、憧子が
「お金!そんなに持ってきてないんだけど、大丈夫なの!?いくら?」
と慌てて尋ねた。
すると大地はにこっと笑い
「大丈夫!値段交渉済みだから!」
と言って、視線を姉の方へ戻した。
──交渉済みって、どういうこと!?
落ち着かない気持ちで座っていると「どうぞ」と呼ばれ、大地の姉の席の方へ案内された。



