「ごめんっ!」
大地が急に、ポケットから手を出し、敬礼の如く、勢いよく頭を下げて謝った。
「え?え!?なになに??」
急な出来事に頭が追いつかず、あたふたする憧子。
そんな憧子の前で、少しだけ顔を上げて、大地が気まずそうに話をし始めた。
「昨日、嫌ならはっきりいいなよとか、勇気出してとか、エラそーで生意気なこと言ったなと思って…。でも、佐敷さんがからかわれてるの見て、悔しくてさ。ついつい、あんな言い方しちゃったんだ。ホントにごめん。」
シュン、とする大地を目の前にして、憧子はふるふると頭を振った。
「わ、私の方こそ!いつまでも言われっぱなしだから、いけないんだもん。分かってるんだけど、なかなか勇気でなくてさ…。だから西嶋くんにはっきり言ってもらって、ちょっと目が覚めたと言うか。だから、ありがとうね。」
弱々しく笑うと、大地は複雑な表情で憧子を見つめた。
「勇気、出したいの?」
大地が少し、憧子の顔を覗き込んで尋ねる。
「もちろん、出したいよ、勇気。でもなかなか、ねぇ?」
ハハッと力無く笑うと、大地は「よし!」と小声で呟いた後、いつもの笑顔で憧子に向かってこう言った。



