それから出欠確認は少しずつ進んでいき「次ー、佐敷ー。」とカイドンが憧子の名前を呼んだ。
「は、はい。」
憧子は立ち上がると大地の方へ体を向けた。
大地は椅子に座ったまま、にっこりと憧子に笑いかけた。
一瞬、ドキッとしながらも、憧子はなんとか
「佐敷です。…よろしく。」
とだけ、言った。
大地が「よろしく」と言いかけた時、
男子の誰かが
「ちなみに佐敷さんのあだ名は『ざしきわらし』でーす」
と言った。
途端に、クラス中からクスクスと笑い声が上がる。
カイドンは呆れたように「まだそんなこと言うやつがいるんかー?いい加減にせんか。」と注意する。
大地はクラスのみんなとカイドンのやり取りを聞いた後、憧子を真っ直ぐ見て、様子を伺ってきた。
なんとなく、クラスメイトからからかわれているのを見られて恥ずかしさを感じ、憧子は大地から目線を逸らすと、俯いたまま席につこうとした。
すると大地が口を開いた。
「今、なんて言ったの?」
クラス中の目線が大地に向いた。
大地は純粋に疑問を投げかけているようだった。
「今、佐敷さんのこと何て呼んだの?もう一回教えてよ。」
クラス中が、シーンと静まり返る。
しばらくして大地が、沈黙を破った。



