5話『欲しいものは一つだけ』

〇雀部神社・外観
モノローグ『昔から欲しいものは一つしかなかった』

〇雀部神社前
神社の境内から、階下を見ると咲夜と朝陽が見える。
咲夜、まひるの頬に手を触れている。
朝陽、境内から見ている。朝陽の後ろからまひるの兄(神主の格好)が出てくる。
まひる兄「まひる?帰ったのか?」
まひる「(慌てて)う、うん!じゃあね、咲夜くん」
ほっとする朝陽。

〇雀部神社・境内。
まひる、走ってくる。まひるの耳は真っ赤。
まひるを見ている咲夜。
階下に目を向けると、咲夜がスマホに出ている。
咲夜「(電話に出て)もしもし……あぁ、すぐ行く。待ってろ」
咲夜去っていく。
まひる兄「咲夜は帰ったのか?」
朝陽「はい、たぶん今日も遅くなると思います」
まひる兄「じゃあ朝陽、晩飯食べて行けよ」
まひる「あ、今日お母さんいないんでしょ。朝陽くんに作らせようとしてる!」
まひる兄「バレたか」
まひる「私がつくるよ」
朝陽「いいよ、僕、ご飯作るの好きだし。咲夜も遅そうだしね」
まひる「朝陽くんは、テスト勉強大丈夫なの?今回かなり難しいんでしょ」
朝陽「んー、大丈夫だよ。まひるは?わからないところない?」
まひる「じゃあ一つ聞いていい? 朝陽くん数学得意だったよね。いつも数学100点」
朝陽「うん、いいよ(微笑む)」
まひる「よかった。私数学が一番苦手でさ」
朝陽「知ってる」

〇同・リビング
まひるの横に朝陽。まひるに勉強を教えている。数学の不等式あたりでも。
朝陽「(ノートに書きながら)こうやってグラフに書くとわかりやすいよ」
まひる「(笑顔)そっか!朝陽くんすごい!」
朝陽「じゃあ、次解いてみて」
まひる「うん!」
朝陽「まひる、勉強頑張るってるね。中学からどんどん順位上げてるじゃん」
まひる「へへ。少しでも近づきたくて」
朝陽「咲夜に、か」
まひる「昔からずっと咲夜くん、一番だったでしょ。目標っていうか、憧れで」
朝陽「わかってるよ」
まひる、照れ笑い。
朝陽モノローグ『ずっと知ってた。まひるの気持ちも全部』

〇高校・1―A教室
テストを受けている咲夜。咲夜、テスト問題を見て笑う。
まひる、真剣。少し困った顔の朝陽。

〇高校・廊下
テスト結果の張り出しの準備。クラス全員そろってる。
萌音「ほんと結果発表はやいよね、うちの学校」
まひる「萌音ちゃんいつも成績いいからうらやましい」
萌音「まひるも頑張ってるじゃん。それもこれも咲夜くんにおいつくためって、ね」
まひる「私なんて全然追いつかないけど……」
まひる「私も一緒に頑張りたいんだ」
萌音「あ、貼りだされるよ!」
萌音、驚いた顔。
まひる目を見開く。見に来た咲夜、驚いた顔。
朝陽、まひるのところにやってくる。
朝陽「まひる」
まひる、驚いて振り返る。
朝陽「デート、どこに行く?」
貼り出された成績
一位【鷹野朝陽 500点】
二位【鷹野咲夜 498点】
三位【小西萌音 482点】

十位【雀部まひる 471点】

〇高校・1―A教室
ざわついている教室。
萌音「今回のテストかなり難しかったのに満点って……ありえない」
まひる「咲夜くんも、萌音ちゃんも十分すごいよ」
咲夜、入ってくる。静かになる教室。
咲夜「(苛立ちながら)くそっ」
みんなが遠巻きにしてるとき、咲夜の前に朝陽だけが歩き出す。ただならぬ雰囲気にシンとなる。
朝陽「テストで一番だったら土曜にデートできるんだったよね」
固まってるまひる。
まひる(朝陽くん?いつもと雰囲気が違う)
まひる、息をのむ。悔しそうに朝陽を見る咲夜。
朝陽「(真剣に)昔から僕が欲しいものは一つしかなかったんだ」
咲夜「……」
朝陽「まひるだよ」

(5話・完)