4話『俺だけを見てろ』

〇高校・外観(夜)
モノローグ『いつもどこかで不安はあった』

〇前話回想・高校・理科準備室前(夜)
咲夜と咲夜に抱きしめられているまひる。
やってきた朝陽。
(回想終わり)

〇高校・理科準備室前
まひる、咲夜と顔が近い。慌てて咲夜から飛びのくまひる。
まひる「(真っ赤になって)咲夜くん⁉ ご、ごごごごごごめん!」
咲夜「いや」
朝陽「咲夜、まひるがここにいるって知らなかったの?」
咲夜「あぁ。まひる探してたら声が聞こえただけ」
朝陽「(まひるに)まひる、もしかして誰かにいたずらで呼ばれたりしてない?」
まひる「全然そんなんじゃないよ」
まひる「私が不注意で閉じ込められただけ」
朝陽「そう?」
まひる「見つけてくれてよかった。ありがとう!」
まひる「門限ギリギリ。早く帰ろう」
歩き出すまひる。

〇街・帰り道(夜)
三人で歩いて帰っている。みんな、何か考えている。
咲夜「そろそろ実力テストだな」
まひる「入学したばっかりなのに早すぎるよね」
咲夜、まひるの前で立ち止まり真剣な顔。
咲夜「実力テストで一番だったらデートしてよ。平日じゃなくて土曜にさ」
まひる「いつも咲夜くんが満点で一番じゃん」
咲夜「あぁ、だからデートしようって言ってる。テストは口実(余裕の笑み)」
朝陽「うちの高校の実力テストは100点は取れないように相当難しく作ってるって」
朝陽「高校から入った外部の子もいるしね」
まひる「そうなの?」
咲夜「(真剣な顔)俺は朝陽にも誰にも負けないから。誰にもまひるは渡さない」
まひる、驚く。顔が赤い。
咲夜「(笑う)よし、決まりな」
朝陽「それ、僕が一番だったら、僕がまひるとデートできるの?」
咲夜、朝陽を振り返って。
咲夜(朝陽、勝負事は好きじゃないし)
咲夜(今まで一番になったことはないだろ)
朝陽と咲夜の引き絵。
咲夜「(頷いて)もちろんだ」
朝陽「よかった」
咲夜「まひる、行きたいところ考えておけよ」
まひる「(真っ赤)う、うん……」
まひるを見てる咲夜。

〇回想・野原
朝陽モノローグ『まひるは俺の後をいつも必死で追いかけてきたし』
走るチビ咲夜、泣いた後のチビまひる、膝にはバンドエイド。
チビ咲夜「ほら(手を差し出す)」
チビまひる「(笑顔で手を取る)ありがとう!」
手を繋いで走り出す2人。

〇回想・中学時代・運動会
咲夜『俺はまひるに好かれてる自信があった』
体育祭で活躍の中学生朝陽と咲夜。女子に囲まれている。
咲夜、まひるの方を見て、ガッツポーズ。
まひる、次のリレーに意気込み。
まひる「私も負けないように頑張るね!」
でも、二位。落ち込むまひる。
まひる「クラスの総合優勝の足引っ張っちゃった」
咲夜「(まひるの頭に手をのせる)次、取り返してやるから見てろ」
騎馬戦で咲夜活躍。
総合優勝して喜ぶまひる。
まひるを見て喜ぶ咲夜。
咲夜『まひるを笑顔にできるのは俺だけだという自信もあった』

〇高校・理科準備室前
咲夜『でもまひるは――』
きょろきょろしながら走ってくる咲夜。
まひるの声「助けてぇ!」
咲夜「まひる!」
まひるを抱きしめる咲夜。
まひる「(泣きながら)朝陽くん!」
咲夜「まひる、今、なんて?」
まひる顔をあげる。
咲夜『困ったときには、いつだって朝陽の名を呼ぶ』

〇朝陽たちのマンション・リビング(夜)
咲夜(あのとき、朝陽の名前を呼んだの、思った以上にショックだったな……)
広い室内。二人とも、大きなテーブルで離れて勉強してる。
咲夜、朝陽を見つめる。顔色も変えずいつも通りの朝陽。
咲夜「朝陽、本気で一番取るつもりあるのか?」
朝陽「僕、咲夜に勝ったことないよ」
咲夜「そうだよな」
咲夜、朝陽の前まで行く。
咲夜「負けないから。テストも、会社も、まひるのことも全部」
向かい合う二人。
朝陽「でも咲夜さ、ちゃんとまひるを守ることも考えてよ」
咲夜「どういうことだ?」

〇高校・廊下(昼)
女の子1、まひるに通りすがりに。
女の子1「ずっと閉じ込められてればよかったのに」
女の子2とくすくす笑って過ぎていく。
2人曲がったところで、咲夜が女の子1の腕をつかむ。
咲夜「お前らがまひる閉じ込めたの?」
女の子1「な、なんのことよ」
咲夜「(冷たい目で)今度まひるに何かしたら絶対許さないからな」
咲夜、言って去っていく。
女の子1「美麗と付き合ってるときのほうがお似合いだったのにね」
女の子2「本当、全然釣り合わない」

〇高校・校門前(夕)
まひる、萌音と歩いて出る。
萌音「また美麗に何かされたらいいなよ」
まひる「いや、城中さんは何もしてないと思うよ……?」
萌音「あの子、咲夜くんと別れたの、まひるのせいだと思ってるみたいだし。心配だよ」
まひる「それはないんじゃないかな。周りの友達が心配してるのかも」
まひる「ほら、城中さんって人気者だし」
咲夜が走って追いついて来る。
咲夜「まひる!」
まひる「咲夜くん!」
萌音「私、先に帰るね」
萌音行ってしまう。
咲夜「(まひるに)勝手に帰るなよ」
まひる「咲夜くんも友達と帰るのかと思ったから」
咲夜「これからは一緒に帰るぞ」
咲夜、まひるの手を取る。まひる驚いた顔。でも嬉しい。咲夜、ぎゅっと手を握る。
咲夜「結婚が決まるまであと三年年なんだ」
咲夜「こういうのにも少しは慣れとけよ」
まひる、どぎまぎしながら手を引かれて歩き出す。

〇雀部神社前
咲夜「まひる、これから困ったときは俺を呼べよ」
まひる「(赤くなって)ありがとう。でも、大丈夫だよ」
咲夜(俺は大丈夫だって言葉が聞きたいんじゃなくて)
咲夜、まひるの手を引っ張る。まひる、抱きしめられる形に。
まひる「な、なに⁉」
咲夜「すっげー心臓の音、速い」
まひる「こんなことされれば誰でもそうなる!」
咲夜「誰でも? 朝陽でもか」
まひる「え……」
咲夜「お前は、もう俺だけ見てろ」
咲夜、まひるの頬に手を触れる。
咲夜(俺は、まひるが困ったときは、俺の名を呼んでほしいんだ)
徐々に近づく唇。
まひる、真っ赤になってぎゅう、と目を瞑る。

(4話・完)