2話『俺を好きになれ』

〇雀部神社・リビング(朝)
朝陽父「これから3年間かけて、まひるちゃんには朝陽と咲夜、二人のうちのどちらかから結婚相手を選んでほしい」
まひる「(朝陽と咲夜に)ふたりとも何か言ったら!? こんなのおかしいよ!」
朝陽「僕らは最初からそのつもりだったよ」
咲夜「あぁ。俺もずっとそのつもりだった」
まひる「なっ!?」
(ここまで前回回想)

まひる父「よく聞け、まひる」
まひる父、まひるの肩を叩く。
まひるモノローグ『父の話を要約するとこうらしい――』
まひるモノローグ『雀部神社に生まれた女の子は、自分で選んだ結婚相手に幸福と繁栄をもたらす。私はその雀部神社に200年ぶりに生まれた女の子で』
神社の絵、赤ちゃんの絵、入れても。
まひるモノローグ『次に生まれた女の子は鷹野グループの跡取りと結婚させると先々代からの約束で決まっていたらしい』
握手してる感じ、デフォルメ絵でも。
まひる「何を勝手に約束してるの!」
まひる父「それも見越して、これまで鷹野にはたくさん援助してもらってる」
まひる「援助って……」
まひる「本人の気持ちは無視なの?」
朝陽父「まひるちゃんは昔から二人と仲良くしてくれてたし、息子たちもその話に最初から賛成していた」
咲夜「まひると結婚できるなら反対する必要がない」
朝陽「僕も」
まひる、咲夜の方を見て、目を見開いて赤くなる。
まひる「(朝陽父に)も、もし、二人以外が好きになったらどうするんですか?」
朝陽父「もしそんな男ができたら、二人のふがいなさゆえのこと」
朝陽父「その場合は、結婚する必要はないよ」
まひる「(乗り出す)本当ですか!?」
朝陽父「あぁ。その場合は、鷹野グループは二人以外から後継者を決める」
まひる「え……」
まひる、心配そうに二人を見る。
朝陽、咲夜、二人とも真面目な顔で座っている。
まひる(後継者を二人以外からって……)
まひる(咲夜くん、後継者になりたくてずっと頑張ってきたのに)
まひる「私には荷が重すぎます」
朝陽父「まひるちゃんは自分の意思だけで好きな人を決めてくれ。それだけでいい」
朝陽父「そこに責任は感じなくていいんだ」
まひる「でも!」
咲夜「まひる。それでいいんだ。俺たちはそれで納得してる」
朝陽「そうだよ、まひる」
決めた様子の二人。困っているまひる。

〇鷹野学園・正門前・入学式(朝)
クラス発表の掲示板。桜の花が舞っている。
まひる(とんでもない入学初日になった)

〇同・体育館・入学式
新入生代表で咲夜が壇上で話している。
周りの声「やっぱり咲夜くんカッコイイ」「入試も一番か」「天才よねぇ」
まひる、咲夜を見つめている。

〇回想・小学校時代・朝陽と咲夜の住むマンション
高層マンションの最上階。
まひる、お手伝いさんにドアを開けてもらって。
お手伝いさん「申し訳ありません、今日は社長がお見えになられてて」
まひる「おじさまが?」
お手伝いさん「あっ」
まひる、するりと入っていく。
朝陽父の声「いいか、二人とも」
リビングの扉が少し開いていて、そっと中をのぞき見る。
小学生朝陽と咲夜の肩に手をかける朝陽父。
朝陽父「(厳しく)学校のテストやスポーツくらい一番をとれる人間でないと、鷹野グループの跡取りになれないぞ」
朝陽父「以上だ」
それを見てしまったまひる。咲夜、ぐっと唇をかみしめている。
出ていこうとしたところで朝陽父に会う。
朝陽父「まひるちゃん、遊びに来てくれていたのか?」
まひる「は、はい」
朝陽父「(微笑んで)これからも二人と仲良くしてやってくれ」
まひる「はい」
まひる(おじさまは私には優しかったけど、二人にはとても厳しくて)
***
図書館の隅で咲夜が勉強しているところを見かけるまひる。
咲夜はいつも一位。

(回想終わり)

〇鷹野高校・体育館・入学式
壇上にいる咲夜。
一瞬咲夜と目が合って微笑まれる。赤くなるまひる。
まひる(咲夜くんはずっと後継者になりたいってわかってたから応援してた)
まひる(だけど、まさかこんなことになるなんて……)

〇同・1―A教室
萌音「まーひる!高校でも同じクラスなんて嬉しい!」
まひるに飛びついてくる萌音(勉強が得意、お姉さん系世話焼きキャラ。小西モーターズの娘)。
まひる、振り返って。
まひる「うん。萌音ちゃんが一緒だと私も心強いよ」
萌音「しかも、また――」
朝陽と咲夜、教室に入ってくる。
女子たちの黄色い声。
萌音「あの二人と同じクラスなんてね。いくら鷹野グループの運営する高校だからって、わざとなんてことはないよね」
まひる(おじさまが運営母体にいるんだもん。その可能性もないことはない……)
咲夜、女子に囲まれてる。まひると目が合い、微笑む。
キャーッとまた歓声が聞こえる。視線を逸らすまひる。
まひる(私、あの咲夜くんと結婚するかもしれないってことなんだよね)
赤くなるまひる。
隣に坂元が来て座る。
坂元「よろしく。俺、坂元司っていうんだ」
まひる「さ、雀部まひるです」
坂元「内部進学?」
まひる「うん。坂元くんは受験組だよね。すごいね、高校から入るのは難しいって聞くのに」
坂元「そんなこと……あるけど」
まひる「(笑う)」
まひる(雰囲気がなんとなく咲夜くんに似てる)
突然、咲夜が来て、まひるを胸の中に引き寄せる。
咲夜「まひるは俺のなんで、ちょっかい出さないでくれる?」
まひる「なっ……!」
まひる(どうしたの、突然!)
ドキッとして真っ赤になるまひる。
まひる、ドキドキして止まらない。ざわつく教室。
まひる「(慌てて)あ、ああああの、離して!」
咲夜「だって手を出されないようにしておかなきゃいけないだろ」
まひる(こんなの心臓が一つじゃ足りない!)
朝陽にベリッとはがされる咲夜。
朝陽「だめだよ、咲夜」
まひる「(ほっとして)ありがとう、朝陽くん」
朝陽「(微笑む)」
朝陽そのまま振り返り、坂元の席に手をドン、と置く。
朝陽、坂元に顔を近づけて。
朝陽「(真顔で)君に出番はないからね」
坂元「ヒッ」
まひる「朝陽くん⁉︎」

〇街・帰り道(夕)
まひるの横に、朝陽、咲夜歩いている。
まひる「2人とも変だよ」
朝陽「普通だよ(シレリと)」
咲夜「こっちは今までさんざん我慢しさせられてきたんだから」
まひる「なに、我慢って……」
咲夜「この話はもともと決まってた話だけどさ」
咲夜「まひるのお父さんは『付き合うとしても高校入学以降。結婚するまでは清い交際で。破った方にはまひるは嫁にやらん!』という条件を出した」
まひる「お父さん……」
まひる(条件より結婚の話をなんとかしてほしかった)
咲夜「だから俺は高校3年間にかけることにしたんだ」見せ絵。
まひる、赤くなってたじろぐ。
まひる「咲夜くんは本当にそれでいいの」
咲夜「当たり前だろ」
自信ありそうな笑顔の咲夜。
咲夜「だからまひる、俺を早く好きになれよ?」
まひる、また赤くなって慌てて首を横に振る。
まひる(もうとっくに好きだけど)
まひる(どうしていいのかわからないよ)

(2話・完)