1話『初恋と結婚相手』

〇結婚式場
式場に差し込む光。ウェディングドレスに身を包んだまひるの後ろ姿。
父とバージンロードを進んでいく先。
まひる(誰?その先にいるのは……)
手を伸ばすまひる。立っているのは咲夜。見せ絵。
咲夜、明るい髪色、背が高い。タキシードを着ている。
まひる「(真っ赤になって)咲夜くん!」
咲夜に手を取られたとき、もう一方から手をつかまれる。
驚くまひる。見上げた先に朝陽。見せ絵。
黒髪、背が高い。こちらもタキシードを着ている。
まひる「なんで朝陽くんまで⁉」
真面目な顔の朝陽。朝陽の顔が近づいてくる。
まひる「ちょ、なに? 待って!」
唇が触れるか触れないか。
まひる「うわぁああああああああああああああ!」

〇雀部神社・まひるの部屋
目が覚めると、ベッドの上。猫(ハガネ)に顔を舐められているまひる。
まひる「ハガネ、おはよう」
和室だけどカーペットを敷いて、ベッドと机だけのまひるの部屋。
まひる「ハガネのせいで変な夢見たよ……」

〇回想・野原
まひるモノローグ『私たち三人はずっと一緒だった』
走るチビ咲夜、チビまひる。
チビ咲夜「おい、まひる! こっちだ!」
チビまひる「(半べそ)待ってぇ……!」
必死で追いかけるまひる。コケる。大泣き。
チビ咲夜「(止まって)どんくさいなぁ」
チビ朝陽「まひる、大丈夫?」
チビまひる「(涙をぬぐって)大丈夫! こんなの平気!」
まひるの膝にはバンドエイドがついている。
まひる、咲夜の手を取って走り出す。
まひる笑顔。

〇回想・小学校
まひるモノローグ『学校もずっと一緒』
鷹野学園・小中高一貫校。
咲夜、朝陽、手を挙げている。まひる、ついていくために必死に勉強している。
二人は100点、まひるは92点。まひる、がっかり。
牛乳を大量に飲むまひる。
身体測定で一人小さくて落ち込むまひる。

〇回想・中学校・廊下
まひるモノローグ『何でもできる二人に憧れてた。でも中学になるころには――』
掲示板の順位貼りだし。
【1位 鷹野咲夜 500点】
【2位 鷹野朝陽 496点】
……
【50位 雀部まひる 415点】
咲夜、女子に囲まれている。まひる、憧れの表情で掲示板を見ている。
まひる(また1番だ)

〇回想・中学校・運動会
2番の旗を持って落ち込むまひる。咲夜がやってくる。
まひる「ごめん、クラスの総合優勝の足引っ張っちゃった」
咲夜「(まひるの頭に手をのせる)次、取り返してやるから見てろ」
まひる、顔を上げる。咲夜、ニッと笑う。
騎馬戦で咲夜活躍。笑顔になるまひる。

〇回想・中学校卒業式・グラウンド
まひるモノローグ『憧れが恋に変わっていた』
グラウンドの端で告白されてる咲夜。まひるそれを校舎の陰から見ている。朝陽がまひるのもとに。
朝陽「まだかかりそう?」
まひる「あれで今日の告白10人目。彼女と別れたって噂出てからすごいの」
まひる「朝陽くんも呼び出されてたんじゃないの?」
朝陽「全員、断ったよ」
まひる「もったいない」
朝陽「まひるは告白とかされてないよね」
まひる「私は二人みたいにモテないよ」
朝陽「それは、僕がつぶしてるからね」と呟いている。まひるは聞こえていない。
朝陽「まひるは告白しなくていいの?」
まひる「(驚いた顔で)……え?」
朝陽「(真面目な顔で)まひるは、咲夜に告白しなくていいの?」
二人、引き絵。まひる、赤くなって慌てて首を横に振る。
咲夜やってくる。
咲夜「おーい、二人とも帰るぞ」
まひる「あの子、一緒に帰らなくていいの?」
咲夜「あぁ。なんだ、やきもち?」
まひる「まさか!」
まひる(好きって言えるわけないよ。幼馴染ならずっと咲夜くんと一緒にいられるんだもん)
まひるモノローグ『私は咲夜くんが好きだった』

(回想終わり)

〇雀部神社・まひるの部屋
まひる(にしても変な夢を見たなぁ)
まひる(咲夜くんだけなら願望だけど、朝陽くんまで出てきたし)
制服に着替えるまひる。
制服を着て、鏡の前でニコッと微笑むまひる。
まひる「高校の制服着ると大人っぽくなった感じ!」
まひるモノローグ『私たちが通う鷹野学園は鷹野グループの経営する小中高の一貫校』
まひるモノローグ『今日から私たちは高等部一年生!』

〇同・リビング
まひる(咲夜くんの高校の制服姿も、早く見たいなぁ)
全体的に和室。大きな二つの部屋をつなげてリビングとしている。
まひる「おはよう!今日の入学式だけどお母さんたちは――」
まひるがリビングに行くと、食卓に咲夜がいる。
咲夜「オハヨ、おせーぞ」見せ絵。かっこいい。見惚れるまひる。
キッチンで母と料理している朝陽、顔を出す。
朝陽「おはよう、まひる」(エプロンが似合う、さわやか)
まひる(もう制服姿見れた!――けど)
まひる「なんでいるの⁉」
まひる母「入学式の前に時間取ってって言ってたでしょ」
まひる「家族写真撮るんじゃないの?」
まひる父「(やってきて)それは話が終わってから」
まひる「話ってなに」
ガラ、と玄関扉(引き戸)の開く音。
まひる父「来たか」
まひる「……誰が?」
入ってくる朝陽父。スーツを着て、威厳がある。眼光鋭い。
まひるには微笑む。
朝陽父「久しぶりだな、まひるちゃん。大きくなったな」
咲夜「(ぼそっと)久しぶりの息子たちには何もないな」
朝陽「(咲夜を制して)お久しぶりです、父さん」
まひる「おじさま……?」
まひる(この人は、朝陽くんと咲夜くんのお父さまで)
まひる(日本を代表する大企業・鷹野グループ株式会社TAKANOの社長だ)

〇同・同
座らされているまひる。横に父母。その前に鷹野家。
まひる(この雰囲気、なに?まるでお見合いみたいな……)
朝陽父「これは家同士で決まっている話だが、再度、きちんと私から話に来たんだ」
まひる(まさかね)
朝陽父「これから3年間かけて、まひるちゃんには朝陽と咲夜、二人のうちのどちらかから結婚相手を選んでほしい」
まひる(け、結婚相手!?)
まひる「なんで!」
まひる父「先々代からの約束なんだ」
朝陽父「まひるちゃんが決めた相手を鷹野グループ後継者に決めるつもりだ」
まひる「私が結婚する相手が後継者……? え……?」
朝陽父「あぁ。朝陽と咲夜は幼い頃から知っていた。でもまひるちゃんには、高校生になったときに伝えるということに決まっていたんだ。だからこうして話に来た」
まひる、父を見る。頷く父。
まひる「(青ざめて、朝陽と咲夜に)ふたりとも何か言ったら!? こんなのおかしいよ!」
朝陽「僕らは最初からそのつもりだったよ」見せ絵。
咲夜「あぁ。俺もずっとそのつもりだった」見せ絵。
まひる「なっ!?」
まひる、咲夜を見て赤くなってたじろぐ。
まひるモノローグ『高校入学初日。嵐が訪れました』

(1話・完)