しばらくして正気に戻ると、自分の行動が無性に恥ずかしくなった。

「す、すみません……。私、頭に血が上って……」
「あはは。晶が怒るとこ、初めて見たかもな」

 葵先輩は怒り方さえ下手くそな私を、あっさり笑い飛ばしてくれた。

「言い返してくれてありがと」

 葵先輩は、よしよしと私の頭をさすってくれた。
 小鳩先輩の暴言なんか、痛くも痒くもないみたい。

(どうしよう……顔が上げられない……)

 私……小鳩先輩のことは、本当の意味で好きじゃなかったみたい。

 憧れと恋はやっぱり違う。

 小鳩先輩の表面的なカッコ良さしか見ていなかったことに気づいてしまった。

 小鳩先輩への気持ちが単なる憧れだとしたら、葵先輩に抱くこの淡い想いは一体――。