「お手本を見せてあげる」
そう言われて、私は床に正座して待機した。
匠先輩は被服室の端まで行き、頭にノートを載せると、真っ直ぐこちらにやってきた。
私の目の前で、腰に手を当てポーズを決める。
そして、スカートを翻し見事なターン!
天井から糸で吊っているみたいに、頭が動かない。
「すごーい……」
私は思わず拍手してしまった。
さすが、モデル経験者は違う。かっこいい!
間近でみる本物のウォーキングに感激していると、匠先輩は呆れたようにため息をついた。
「感心している場合じゃないよ。晶ちゃんにもできるようになってもらわないと困るんだからね!」
「で、できますかね……?」
「晶ちゃんは背も高いし、骨格もモデル向きだ。俺よりよっぽどステージ映えするよ」
「あはは……。私なんか全然……」
自己否定を口にした途端、スパーンと紙を丸めたもので頭をはたかれた。……めちゃくちゃ痛い。
「ネガティブな発言は一切禁止!後ろ向きな言葉は癖になるよ。気をつけて」
匠先輩は私の目を見つめて、こう言った。
「変わりたいと思った奴しか変われないんだよ」
「……はい」
「じゃあ、もう一度!今度はもっと顎引いて、腹筋を意識して」
「はい!」
私は葵先輩が操るミシンの音をBGMにして、毎日のようにウォーキングの練習に明け暮れたのだった。


