初恋リメイク!


 ◇

「はい、もう一度」
「やり直し!」
「最初から!」

 採寸が終われば、ショーの当日までのほほんと過ごせる……なんて上手い話はなかった。
 デザイナーが丹精込めて作った服を活かすも殺すもモデル次第。
 ランウェイを華麗に歩くには、ウォーキングのトレーニングが必要不可欠だった。
 普段は優しい匠先輩だが、ステージのことになると途端に人が変わったように厳しくなった。
 トレーニングの時は一切の妥協を許さない鬼軍曹に豹変する。
 
(み、水……!)

 私は砂漠でオアシスを見つけた遭難者のように、ペットボトルの水をすすり飲んだ。
 トレーニングはまず身体をほぐすストレッチから始まり、筋肉トレーニングを五セット。
 その後は本格的なウォーキング練習に突入する。
 壁に背をついて何度も腹式呼吸したり、顔の表情や目線の動きをスマホでチェックしたり。
 私が苦手なのは頭の上にノートを置いて歩くメニュー。
 重心がすぐにぶれてしまい、私は何度もノートを落とした。

「緊張感が足りないなあ。次床に落としたら、腹筋二十回!」
「ひうっ!」
「綺麗な姿勢を保つには、ある程度の筋肉が必要!」

 背後に漆黒のオーラをまとった匠先輩は容赦なかった。
 頭ではわかっていても、全てを同時にこなすのは難しい。本格的な練習を始めて数日の素人には無理な話だ。