高等部の制服を着崩し、焦げ茶色の髪をハニワのロゴが入った派手なシュシュでサイドテールにしている。

 堀内学園は公立の学校と比較すると自由な校風だが、彼女の見た目は校則違反ギリギリのラインだった。

 彼女はひょいと現れると何のためらいもなく匠先輩に近づいていった。

「あはは!匠くんは相変わらずちんまりしてるね!」

 彼女は電話を終えたばかりの匠先輩の頭を撫でた。
 髪の毛をぐしゃぐしゃにされた匠先輩は、苦々しげに眉をしかめながら手を振り払った。

「晶ちゃん、この人は日向映奈(ひゅうがえいな)。高等部の一年生だよ。俺とは同じマンションに住んでる幼なじみなんだ。今回のショーではヘアメイクを担当することになってる」
「映奈でーす!よろしく!」

 映奈先輩は決めポーズのように、ピースサインを目元に掲げた。
 
「えっと……久賀山晶です。よろしくお願いします」

 ファッションショーは、デザイナーとモデルだけで作りあげられるものではない。

 華やかな舞台を支える裏方が必要不可欠なのだと、当たり前のことにようやく思い至る。

「映奈、晶の採寸を頼む」
 
 葵先輩はそう言うと、紙が挟まれたバインダーとメジャーを映奈先輩に渡した。