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二日後の昼休み。
私は結論を携え、第三被服室へとやってきた。
今度こそ、「できない」とはっきり返事をするつもりだった。
(あれ?ドア開いてる……。中にいるのかな?)
先日は閉め切られていた出入り口の引き戸が、今日は開いている。
「葵せんぱ……」
葵先輩の後ろ姿を見つけ声をかけようとしたその時、驚きではっと息を呑む。
(笑ってる……?)
葵先輩はトルソーに布を留めつけながら、ニヘラとしまりなく笑っていた。
まるで、服作りが楽しくて仕方ないと言わんばかりだ。
よくよく耳を澄ませてみると、調子が外れた鼻歌まで歌っている。
針仕事をしながら歌っているなんて、おとぎ話に登場する妖精のようだった。
「お!今日も葵のやつ、ご機嫌だな?」
「た、匠先輩……!」
被服室の中に入るのをためらっていると、いつのまにか背後に匠先輩が立っていた。
「あいつね、普段はツンケンしてるけど、服を作る時だけはすっげえ楽しそうなんだ。意外でしょ?あーあー。あんなだらしない顔して……」
匠先輩は心配性の母親のような口調で、葵先輩を見守り続けた。
少年のようなあどけなさでトルソーを見つめるその表情は、私の中にあったクールな葵先輩像とかけ離れていて、目が離せなくなる。


