逃げて来た――。
 ズバリ言い当てられて、あたしは胸がつまった。
 
 ズルい。このひと。
 いっけんホンワカした雰囲気なのに、こんなに鋭いなんて。
「オレでよかったら話聞くよ。どーせ今日は本借りるひともいなくてヒマだしね♪」
 先輩は、ふわっと甘いほほえみを口元に浮かべた。
「自分だけで抱えてたら、ずっと苦しいままでしょ?」
 そう。それはそうなんだけど――。
「大丈夫。もちろんヒミツは厳守するから。聞かせてくれないかな」
……先輩にだったらいいかな。
 担任の先生や部活の顧問の先生に相談したところで、珠莉たちの耳に入って、ますます怒りを買うだけかもしれないし。
 あたしは先輩に、このところずっと胸に閉じこめていた悩みを打ち明けた。