「あ、あたし、いつも食い意地張ってるから」
 食べものを、なによりあたしの大好物を投げ捨てるヤツなんてぜったいに許せなかったんだ。
 でも、今考えると、ちょっとはしたなかったかな……???

「弓佳ちゃんが教えてくれたんだよ。好きな気持ちの強さを。キミはオレのこと忘れてたかもしれないけど、オレはずっとキミのこと覚えてた。キミの、なにがあっても好きなものを大切に思える心、心ないヤツらに立ち向かえる強さにすごくあこがれてた。またキミに会いたい。今度こそちゃんとお礼を言いたいって願ってたんだ。でも、まさかこういう形で会えるなんて、思ってもみなかったけどね」
 
 あたしは、かあぁっ、と顔を赤くしながら。
「まったく忘れてたわけじゃなかったんですけど、あのときの先輩のこと、年下だとかんちがいしてて……」
 あたしよりも背がちっちゃくて、かわいらしかったから、てっきり小学校低学年くらいかと思ってたんだよね。
 
 露原先輩は照れくさそうにはにかんで。
「今はどう? オレ、少しはキミの力になることができた? あの日のお礼を返すことができたかな?」
「――もちろん」
 あたしは大きくうなずいた。
 「露原先輩はあたしのヒーローです。あたしにとって、いちばんの!」
 
 『ロゼ』のサンドクッキーみたいに、ほっこりと甘くて、つらいとき、悲しいときにそっと心をなぐさめてくれる。
 いっしょにいるといつも元気がわいてくる。
 先輩はあたしの大好きな存在。
 誰にもゆずれない、いちばんのヒーロー。