キミは道にバラまかれたクッキーをひとつ残らず拾ってくれて。
「おい、やめとけよ。そんなんにさわるとコイツのバイキンが――」
「うるさいっ!」
 ニタニタ笑ういじめっ子たちを射抜くように見つめると。
「あんたたち、なんでこんなひどいことできるの? あたし、ちゃんと見てたんだから。作ったひとの気持ちとか、考えたことないの?」
「だって、町じゅうのウワサだぜ? こいつんちのせいで、この町にも病気が広がったって。そんなヤツんちが作ったモンなんか、もう食えたモンじゃねーよ!」
 そしたら、キミは拾ったクッキーの包み紙をサッと破いて、そのままバリバリッと食べちゃったんだ。

「オマエ、なにやってんだ!? きたねーな、道に落ちたモン食うなんて」
 いじめっ子たちからそうやって言われても、
キミは全然顔色を変えないで、
「それがなんだっていうの? はっきり言ってアンタたちのやってることのほうが、よっぽどきたないじゃん! あのねぇ、なにかを好きな気持ちってのは、そんなカンタンに揺るがないの! あたし、昔から『ロゼ』のクッキー大好きだもん。アンタたちみたいに、ヘンなウワサ耳にしてキライになるようじゃ、もともとそんなに好きじゃなかったってことだよ!」
 ってキッパリ言い放ったんだよね。
 いじめっ子たちは、キミの迫力に圧倒されてすぐにその場から逃げてった。

「大丈夫だった? まったく、こんなおいしいクッキーを粗末にするなんで信じらんないよね!」
「キミ、このクッキー好きなの……?」
 オレの言葉にキミは太陽みたいにほほえんで。
「うん、大好き! これからもずっとずっと大好きだよ!」
 そして、オレに拾ったクッキーを手渡すと、そのまますぐに立ち去っちゃったんだ。