「目を、背ける?」
「キミは、一度でも自分からその子に話しかけたり、弓佳ちゃんの言ってることはほんとうなのかって確認したことある?」
 
 珠莉の顔がカッ、と赤くなる。
「バカ言わないでよ! 好きなひとにそんなカンタンに近づけるわけないじゃない!」
 
 いっぽう露原先輩は冷静な表情をくずさないまま。
「じゃあ、ずっと今みたいにライバルつぶし続けるつもり? 自分のまわりに、ひとりもジャマ者がいなくなるまで。でも、そうしたからといって、相手が自分のこと好きになってくれるかはまた別の話だよね」
 珠莉の肩が小刻みにふるえてる。

「ほんとうに好きなひとがいるなら、よそ見せずに、ちゃんと自分の気持ちに向き合いなよ。誰かのせいばかりにして文句ばっかり言ってたら、そのうちキミのまわりから誰もいなくなっちゃうよ」
「う……うるさいっ!」
 珠莉は、青ざめた表情で逃げるように視聴覚室を出て行った。