「どうして? どうして、弓佳のためにそこまで……」
 困惑している珠莉の顔を、先輩はしっかりと見すえて。
「オレが、弓佳ちゃんを好きだから」

 えぇっ!?
 先輩が、あたしのことを……?
 ウソでしょう!?

 あたしはドキドキとはやる胸をおさえながら、
「あ、あの先輩。もういいんです。彼氏のふりはしなくても――」
 と、伝えたけれど、先輩はあたしの顔をじっと見つめたまま、
「ふりなんかじゃないよ。今までのオレの言葉は全部ほんとうのこと。オレはキミのことが好きだったんだ。図書室で出会うよりもずっと、ずーっと前からね♪」
 と、唇をほころばせた。

 どういうこと?
 図書室で出会うよりもずっと、ずーっと前からって。
 露原先輩は、昔からあたしのことを知ってたの?

 珠莉は、不機嫌そうに腕を組みながら。
「どうして弓佳なんて好きなのか知らないけど、だまされないほうがいいですよ。弓佳は先輩にはいい顔してるけど、裏ではひきょうなことたくさんしてるんだから。そのうち先輩もきっとひどい目に――」