「露原先輩……」
 どうしてここに?
 
 先輩はあたしのそばに寄って、
「約束したろ? これからはなにがあっても、ぜったいにオレがキミのこと守るからって」
 と、あたしの両肩に手を置いた。
 恐怖でこわばっていた全身が、先輩の手のあたたかさで、ゆっくりとほどけていく。
 
「あたしたちのこと、つけて来てたの?」
 いぶかしげに先輩を見つめる珠莉に、先輩は小さく首を振って。
「そうじゃない。さいきん弓佳ちゃんどうしてるかな? って気になって。教室に行ってみたら、いないって言われたから。だけど、ゲタ箱には靴があったし、今日は部活も休みの日だから、もしかして誰かさんに呼び出されたんじゃないのかな~? ってピンときたんだ」
「それでここまでたどり着いたってわけ?」
 珠莉の眉間に深いシワが寄る。
「そう。今の時間に使用してない部屋はここだけだし。音楽室にはピアノで遊んでる子たちがいるし、理科室では追試の最中。いるとしたら、視聴覚室だろうと思って。どう? だてに図書委員やってないでしょ。推理小説い~っぱい読んでるからね♪」
 冴えてるでしょ? と、先輩は、茶目っ気たっぷりに髪をかき上げてみせた。