クスクスッ、と珠莉のあざ笑うような声が耳に響く。
「だけど、あの先輩も、もの好きだよね〜。あんたみたいなのを助けようとするなんて。ちょっとどうかしてるんじゃない?」
「ーーやめて」
 あたしのなかにみるみる炎のような感情が広がっていく。
「なに?」
「あたしのことはなにを言ってもかまわないけど、露原先輩のこと……あたしの好きなひとのこと、ひどく言うのは絶対に許さないっ!」
 露原先輩の他人を深く思いやれる心。
 ほっこりとあたたかく、明るい笑顔。
 先輩が、どんな気持ちであたしに手を差し伸べてくれたか。
 そんなこと、なんにも知らないくせに!
 
 珠莉は、一瞬ビクッと身をふるわせたけど、
 すぐにあきれたような視線をあたしに投げかけて。
「そんなにその先輩がお気に入り? 内海くんにもベッタリなくせして、どんだけ男好きなの? 先輩に、わたし、なんにもしてないのにクラスのみんながいじめてくるんですぅ♪ とかブリッコして近づいたわけ? うっわ、キモ! あんたみたいなのが、悲劇のヒロインなんて気取ってんじゃ――!」
「言っとくけど、そんなんじゃないから」
 ガラッ! と視聴覚室のドアが開き、パッと電気が灯った。
 その瞬間、あたしは、あっ! と声をあげた。

 あたしたちの目の前にいたのは、露原先輩。
「弓佳ちゃんがオレに頼んだんじゃない。オレが彼女のこと助けたかったんだ」