「なんなのって――」
 珠莉は口の端をゆるませながら。
「まさか彼氏? あんた、内海くんとあのひと二股かけてたの? やだぁ~、そこまで男好きだったなんて~!」
 
 あたしは、なんとか立ち上がって。
「……ちがうって言ってるでしょ。大空は友だちなの。それに、露原先輩は彼氏なんかじゃない。あたしのこと助けてくれてただけ」
「助けてくれてた!?」
 珠莉の眉がピクッとつり上がる。
「珠莉たちからいやがらせ受けるの避けるために、先輩に彼氏のフリして協力してもらってたんだ」
 
 すると、珠莉はダンッ! と片足で床を踏み鳴らして。
「はぁ!? やっぱ弓佳ってどこまでもウソつきのひきょう者だよね。あたしたちは、いやがらせじゃなくてほんとうのことを教えてあげてるだけなのに、先輩に泣きつくなんて、どんだけ自分がかわいいの?」