そうだったんだ……。
 
 先輩のあたしに対するやさしさや思いやりは、全部自分のつらい体験からきてるんだ。
 打ち明けるだけでも、きっとすごく苦しかったはずなのに。
 あたしのために――。
 
 「話してくれて、ありがとうございます」
 あたしは、先輩の手をそっとにぎりしめた。
「弓佳ちゃん?」
 先輩が驚いた目であたしを見つめてる。

 いけない。
 あれほどかんちがいしちゃダメって言い聞かせてたのに。
 あたしたちはウソの「カレカノ」同士なのに。
 「ゴ……ゴメンなさい! あたし――!」
 あたしは先輩からパッ! と手を離すと、そのままわき目もふらず先輩のもとから走り去った。