教室にいても。
「弓佳ってひどいよね」
「背が高いってだけで、顔もたいしたことないから、悪知恵働かせるしか手段ないんじゃない?」
「ひきょう者だよねー!」
 そんな陰口が毎日ひっきりなしに聞こえてくる。

 ゲタ箱にはいつも。
「裏切り者」
「サイテー」
「ひとをだましてまで内海くんとつき合いたいの?」
 っていう内容のメモがどっさり。

 クラスの子たちの視線がいやで、最近は休み時間に図書室に逃げこむことが多くなった。
 目立たない、いちばん奥の学習机にひっそりと身をひそめるばかり。
 どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
 あのときどうすればよかったのかな……?

「キミ、キミ」
 あたしの肩に、あたたかい手がふれた。
 顔をあげると、キリッと目鼻立ちの整った、背の高い男子生徒が、あたしのそばに立っていた。
 少し茶色がかった髪の毛が、透明感のある肌によく似合ってる。
 わぁ、キレイなひと。先輩かな?
「大丈夫? 具合悪いの?」
 
 あれっ、あたし――。
 そっか、いつの間にかうたた寝してたんだ。
 このごろ夜はよく眠れないから。