その日の帰り道。

「あの、先輩」
「なに? 弓佳ちゃん」
 あたしは先輩を見上げて。
「どうして先輩は、あたしのためにここまでしてくれるんですか?」

 こうやって毎日いっしょに登下校したり。
 いつもなにかと気にかけてくれて。
 それに、さっき珠莉から助けてくれたときの言葉。

――これからはなにがあっても、ぜったいにオレが彼女のこと守るから。
 
 きっと、お芝居だろうけど、あたしのためにあんなふうに言ってくれるなんて。
 
 すると、先輩は、
「前にも言ったろ? 困ったときはおたがいさまだって」
 遠慮しなくていいから、と言わんばかりにやさしく目を細めた。
 そして、フッと空に視線を移して。
「むかしね、オレもキミと同じような目に遭ったことがあるんだ」

「先輩が!?」
 先輩は小さく苦笑いを浮かべて。
「弓佳ちゃんとちがって、恋愛関係で一方的にうらまれたとかじゃないけど。小学生のときにちょっとしたトラブルがあって、悪口言われたり、暴力振るわれたり。もうさんざんだった」