「弓佳ちゃん!」
 そのとき、聞き覚えのある明るい声が聞こえた。
 ふり向いたとたん、飛びこんできたのは露原先輩のやさしい笑顔。
「なかなか図書室来ないから、心配して迎えに来ちゃった♪ さ、行こう」
 先輩は、あたしの手をしっかりとつかんでそのままスタスタと歩き出す。

「待ちなさいよ、弓佳!」
 珠莉の声に、先輩がくるっとふり返る。
 その顔はさっきと変わらず穏やかだけど、そのまなざしはとっても力強くて。
「なんの用? 言っておくけど、弓佳ちゃんにひどいことしようとしてもムダだからね。これからはなにがあっても、ぜったいにオレが彼女のこと守るから」
「先輩……」
 助けてもらってホッとしたのと同時に、胸がきゅうっとしめつけられるような切なさが募る。

 分かってるのに。
 これはただの「作戦」だって。
 あたしと露原先輩は、ほんとうのカレカノなんかじゃないってこと。
 そんなこと、分かってたはずなのに。