それからしばらくすると、ウワサはすぐに広がった。

――藤堂さんの彼氏って二年の露原先輩なんだって!
――いつもいっしょに学校来てるあのひと?
――いいなー、藤堂さん。あんなイケメンでやさしそうな彼氏いて。

 そして、そのウワサは珠莉の側についていた部活の子たちにも届いたみたいで。
「ちょっと珠莉。あたしたちに言ってたこととちがわない?」
「弓佳のつき合ってるひとって、二年の先輩なんでしょ?」
 ある日の放課後。
 ろう下で珠莉が部活の子たちに問いつめられているのを目撃した。
「ううん! ほんとうにあたし見たんだもん。弓佳は内海くんと――!」
 あたしに気づいた珠莉は、キッ! と鬼の形相であたしをにらみつけた。
「弓佳、今度はなにたくらんでるの?」
 たくらむ!?
 珠莉は、
「みんなのことはだませても、あたしはそうはいかないんだから」
 と、ゆっくりとあたしのほうに歩み寄って来た。
「言いなさいよ。白状しなさいよ、ホントのこと」
 背中に冷や汗がつたう。
 どうして分かってくれないの……!?
 どうしよう。こわい、こわい。
 強い恐怖が襲いかかってきて、逃げようにも逃げられない。