翌朝。
「おはよう、弓佳ちゃん!」
 まだ眠けまなこのあたしを、先輩はスッキリした顔で迎えにきた。
「ホントに来てくれたんですね……」
「あたり前じゃん、オレは今キミの『彼氏』なんだから」
 できるだけふたりでいるようにすれば、状況も変わっていく。
 そんな先輩のアイデアで、あたしたちは、しばらくの間いっしょに登下校することになったの。
 
 あたしも背はクラスでは高めのほうだけど、先輩はさらに背が高くて。
 間近で見る先輩の横顔は、すっと鼻すじが通っていて、知的で大人びた雰囲気。
 こうしていっしょに歩いているだけで、とってもドキドキする。
 なにを話していいのか分からず、ただモジモジしていると。

「こうやって、だまったまま登校するのもつまんないから、手でもつなごっか?」
 と、先輩があたしに笑いかけた。
「手を!?」
 そんな、いきなり?
「だって、オレたちカレカノ同士なんだから。それらしくふるまったほうがよくない?」
 そ、そう言われましても……!
 朝っぱらから頭がふっとうしそうになっているあたしを、先輩はおもしろそうにながめながら。
「そんなにあせる必要もないか。ゆっくりおたがいの距離を縮めていったほうがドラマチックだもんね♪」

 も~! ひとのこと、からかうようなことばかり言うんだから。
 露原先輩って、知的なのか、それともチャラいだけなのかどっちなの?