「その日以来、部室や教室では無視されたり、陰口とか言われたり、ゲタ箱にいやがらせみたいなメモ入れられるようになったりして。不登校になったら両親が心配するから、なんとか学校には通ってるんですけど、部活には行けなくなっちゃって――」
 
 露原先輩は、うーんと腕組みしながら眉間にしわを寄せてあたしの話を聞いていた。
「それは深刻な事態だね。明らかにいじめだけど、キミは今まで誰にも助けを求めなかったの?」
「それが……珠莉に言われたんです。『これはいじめじゃない』って」
「へっ?」
「前に、もうこんなことするのやめてよ! って頼んだとき――」

 あのね、弓佳。これはいじめなんかじゃないから。
 
 あたしたちは弓佳のイジワルでウソつきな心を直すために教育してあげてるんだよ。

 これは弓佳のためなんだから、かんちがいしないでよね。

 「やめて」じゃなくて「ありがとう」って言ってほしいくらいなんだけど。
 
 もし被害者ヅラして「いじめられた」とか言って内海くんに泣きついたりでもしたら、さらに教育を厳しくするからね。